ビートたけし著「アナログ」感想。キャッチコピーは「全員善人」

ビートたけし著アナログ

ビートたけし著「アナログ」は自身初の書き下ろし恋愛小説です。

素性も知らず連絡先も交換せず、週一回同じ曜日同じ時間に同じ喫茶店で出会う。

そんな不器用で「アナログ」な関係を続ける2人の揺れ動く感情を綴った本作は、激しいバイオレンスに満ちた「アウトレイジ」シリーズなどの狂暴な面とは全くといっていいほどの正反対な優しさや穏やかさを感じました。

「アウトレイジ」シリーズのキャッチコピーが「全員悪人」でしたが、「アナログ」はさながら「全員善人」といったところでしょうか。

とても不器用。だから静かに燃える恋。

「アナログ」の主人公「水島」は都内の設計事務所に勤める優秀なデザイナー。
いつも上司に手柄を横取りされるなどの不満もありつつバリバリと仕事をこなしています。

ある日、高校時代からの友人との待ち合わせで入った喫茶店「ピアノ」で偶然出会った「みゆき」に惹かれた水島は
「今度またお会いしたら声をかけてもよろしいですか?」
と聞きそれから、週に一回木曜の夕方、互いの都合が合えば「ピアノ」で会う。
という関係をスタートさせます。

素性も知らず、連絡先も知らず、ただ週に一回喫茶店で運が良ければ会える。
という儚い関係。

しかしその儚さゆえ、水島の中でみゆきへの想いは日毎に強くなっていくのです。

たけしがたどりついた“究極の愛”。
狂暴なまでに純粋な、書下ろし恋愛小説。
「人生で一度だけ、こんな恋がしたいと思った。」

「お互いに会いたいという気持ちがあれば、絶対に会えますよ」すべてがデジタル化する世界で悟とみゆきが交わした、たったひとつの不器用な約束。素性も連絡先も知らないまま、なぜか強烈に惹かれあう二人の、「アナログ」な関係が始まった。いまや成立しがたい男女のあり方を描き、“誰かを大切にする”とは何かを問いかける渾身の長編。

新潮社HPより引用

スマホ、SNS、デジタル全盛の時代にあってそういった通信手段を一切排した関係性を続ける2人の交流を水島の視点から描く本作は、気軽に繋がれないからこそ膨らんでいく想い、会えない時間があるからこそ盛り上がっていく関係性にドキドキします。

ほんのちょっと昔、スマホどころか携帯もなかった頃、気軽に連絡を取れなかったであろう時代にはむしろ当たり前にあった繋がり方がとても魅力的に、とても豊かな時間として描かれています。

気軽に繋がれるから逆に希薄になる。
いつでも繋がれるから想像力が乏しくなる。

そういった風潮を風刺しているようにも受け取れます。

ビートたけし名義の小説だから・・・

ロマンチストな面が全開の「アナログ」ですが、一方で悪友との会話は「お笑い」の方のビートたけし節が全開です。

仕事終わりにいつも集まる高校からの悪友「高木」と「山下」の焼き鳥屋や居酒屋で繰り広げられるゲっスい下ネタ話は好きな人にはたまらないネタのオンパレードです。

「やっぱり、どうしても笑いに走っちゃうところがあって、仲間たちのくだらない話なんて普段(たけし)軍団で話していることと同じだから、何冊だって書けちゃう。だけど、ほかのシーンは状況を説明するのに長くなっちゃって、そこが本当に大変だったね」
オリコンニュースより引用

たけし節全開な掛け合いは好きな人にはたまらなくおもしろいですが、苦手な人にはむしろ評価を下げる要因かもしれません。
もちろん僕はおもしろく読みましたよ。
なんならその会話部分だけもう一度読み返すぐらい、本編とはまったく関係なくおもろかったです。

映画化が楽しみ!

この小説がやっぱりおもしろいと思う点の一つとして、描写が映像として浮かび上がってくるんです。もちろん完全に「キタノ映画」としての映像です。

印象的な「キタノブルー」と静かな間の流れる独特な映像が、文章、行間からにじみ出てきます。

すでに映画化が発表されている(公開日など具体的な話はまだですが)ので、どんな映画になるのか、今から楽しみですね。
主人公「水島」は大森南朋さん(アウトレイジ最終章でも最高でしたね)なんかしっくり来ると思うなあ。

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