さよなら、田中さん/鈴木るりか著/の感想。スーパー中学生が書いた気持ちの良い小説

さよなら、田中さん

「王様のブランチ」のブックコーナーで紹介されていたのがきっかけで読んだ
「さよなら、田中さん」鈴木るりか著
がとてもおもしろかったです。

小学6年生の田中花実とビンボーだけど底抜けに明るいお母さん2人暮らし母子家庭の日常に起こる事件、一大事を描いた5編の連作

可笑しかったり、考えさせられたリ、小学生の頃の気持ちに戻った感じがしたり、しんみりと泣けたり、読み進めていく中で色んな感情が揺さぶられました。

世間的な一番の話題として、著書の鈴木るりかさんが2003年生まれで著書刊行当時まだ中学2年生!!!のスーパー中学生だということ。
小学4年生、5年生、6年生の時に、3年連続で小学館主催「12歳の文学賞」大賞を受賞したこと。

というスーパーキッズっぷりにスポットが当てられていますし、実際スゴイことだと思いますが、そんな事を抜きにしても今作は誰にでもオススメできる良作です。

お母さんと花実ちゃんの明るさがさわやかでイイ

「さよなら、田中さん」は全体が明るくさわやかすっきりした読み口なので、とても気持ちよく読み進められました。

主人公の花実ちゃんとお母さんが2人とも明るいのがイイんです。

ビンボーがゆえに困ることも多い田中家ですが、悲観的になることもなく、かといってムリをしている風でもなく、近所の激安スーパーで値下げ品を買って得した気分になったり、アパートの大家のおばさんに色々良くしてもらったり、近所の銀杏を大量に拾えるスポットを熟知していたり、ハレの日のコサージュを新聞紙で自作したり、その日常はたくましく楽しんで活き活きとしています。

かたやクラスメイトは中学受験の準備で塾通いに忙しかったり、家族の問題で陰があったり、裕福な生活を送っているはずなのにビンボーな田中家の方がずっと幸せそうに見えるのです。

幸せを感じるのは境遇ではなく気の持ちよう次第だということが全体を通したテーマとして伝わってきます。

ビンボーな母子家庭で色々困ることも多いけど、ガハハと笑って明るく生きる。といった構図は「漁港の肉子ちゃん」西加奈子著。と近いので、肉子ちゃんがおもしろかった人なら間違いなく今作もおもしろいと思います。

鈴木るりかさんのこれからの活躍が楽しみ!

「さよなら、田中さん」刊行時まだ中学2年生!というスーパーキッズっぷりが大注目されている著者の鈴木るりかさん。

さらに驚くべきは「さよなら、田中さん」に収録されている5編の内の1本「Dランドは遠い」は小学4年生の時の作品(をベースに改稿して収録)なのです。

自分も小学4年生の頃は絵やマンガを書いたりしていましたし、創作めいた事は誰しもがやっていた経験があるかと思いますが、その作品が大人も感動させるようなクオリティだというのが本当に驚きです。

「さよなら、田中さん」を手に取ったきっかけはスーパー中学生が書いた!というセンセーショナルな話題からでしたが、いざ実際に読み始めてみるとその文体は大人が書いたものとまったく遜色なく、むしろよくそんな言葉知ってるな!と思うほど語彙ボキャブラリーが豊富で、「中学生が書いた!」という驚きは忘れてストーリーそのものに没頭して読み進める事が出来、その描写に何度も感情を揺さぶられました。

初めて小説を書いたのは小学4年生の9月30日だ。その日、図書館で小学生限定の新人公募文学賞「12歳の文学賞」(小学館主催)の存在を知った。応募締め切り日当日でもあったが、賞品の図書カード10万円とパソコンに引かれた。

「大好きな(漫画雑誌)『ちゃお』を一生分買いたくて、原稿用紙11枚を半日くらいで手書きで一気に書き上げました」

AERA dotより引用

「ストーリーはいつも勝手に湧き上がってきます。キャラクターが勝手にしゃべり出してくれるので、それを書き留めている感じです」
「小説を書く時は常に読む人のことを考えて、独りよがりな小説にならないように気をつけています」

AERA dotより引用

るりかさんの将来の夢は「小説家か漫画家」。欲しい賞を尋ねると、はにかみながら「芥川賞」と返ってきた。

AERA dotより引用

小学4年生にして原稿用紙11枚を半日で書き上げる執筆スピード。
沸き上がるストーリーの豊かさ
読者の事を考えて書く。という小説家としての姿勢。
そして創作活動を続けていくという意思。

将来が楽しみ。というより、末恐ろしい・・・という表現がしっくり来るぐらいです。
小説家として今後の活躍に大きく期待してしまいます。

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